味覚センサー評価による戻りカツオの特徴と成分の関係と成分の関係
宮城県産業技術総合センター 様
戻りカツオの位置づけをはっきりさせたい!
宮城県産業技術総合センターでは、「本当のおいしさ」「品質」への数値化という現場のニーズ、 鮮度劣化が早い(気仙沼は「生」が売り)という事実から、従来の手法を含めた様々な手法により、
「戻りカツオ」の位置づけをはっきりとさせるという課題に取り組みました。官能評価に成分分析、 味識別センサーシステムによる評価を加え、検討しました。以下、その一部をご紹介いたします。
背景
- 宮城県気仙沼地区のカツオ水揚げ: 全水揚げ高の約20%、生産額の約25%を占める (50億円/年程度)。
- 「戻りカツオ」としてのブランド化推進中: 地域HACCP導入による取扱いマニュアルを作成、地域一体となったPR
- 「夏カツオ」との違い: 大きな違いは脂質含量が多いこと。
課題
- 魚の“おいしさ”は、単純な脂質含量では決まらない。
- 現場ニーズ:「本当のおいしさ」「品質」への数値化
- 鮮度劣化が早い(気仙沼は「生」が売り)。
→ラウンドでの流通を余儀なくされる
→販売(食卓)までの、適切な鮮度評価法がない
当座の課題
手始めに、従来の手法を含めた様々な手法により、 「戻りカツオ」の位置づけをはっきりとさせたい。
- 「良い戻りカツオ」なる、位置づけを科学的に定義
- 少なくとも主要因が脂質含量だけでよいのかをはっきりと
- 鮮度評価への可能性を見出せるのか
テスト実施内容
原料(カツオ)
- 水揚げ時期
- 南方産(冷凍) ・7月近海産(冷凍) ・9月近海産(冷凍) ・11月近海産(陸冷)
- 部位
- 背側 ・腹側
- 背側 ・腹側
計測項目
- 官能評価(プロにより戻りカツオらしさを評価)
- センサーによる味評価
- 化学的指標
- 油脂含量・アミノ酸系旨味成分
- 脂肪酸組成・核酸系旨味成分
- 油脂の融点・鮮度=K値
センサーでの試験方法
- 解凍後の試料に、4倍量の水を加えホモジネートし、ろ過後の透過液を試験に供した。
- アルファ・モス社製味識別センサーシステム(ASTREE)にて、識別に寄与するセンサーについて主成分分析を行った。
- 測定条件
- 試料液を撹拌しながら、室温下で120秒間測定
- 同一試料を4回測定し、データ解析
※油脂分はクリーム状となりろ紙を通らないため、試験液にはほとんど含まれていなかった
まとめ
- 官能評価との相関は、油脂含量の寄与率が最も高く、 戻りカツオの特徴を示す主要因であることが確認された。
- 味覚センサーは、試料液にほとんど油分を含まないにも関わらず、脂質含量の多少とよく相関した。
- 味覚センサーは、官能評価よりも個体評価の精度は 高いと期待されることから、「良い」カツオの管理基準 としての利用が期待できる。
- 併せて今後、鮮度の評価に利用可能かを検討したい。
資料:
H18 日本食品科学工学会 宮城県産業技術総合センター資料
※添付の資料は著者の許可を得て掲載しています。