におい分析ツールの特徴と役割

におい分析【1】 半導体酸化物センサーによるにおい識別
におい分析【2】 高速GCによるにおい識別と成分推定
におい分析【3】 GC-Oによるにおい成分の同定
におい分析【4】 IMR-MSを用いたフレーバーリリース分析

におい分析【1】半導体酸化物センサーによるにおい識別

におい識別センサーシステム FOX4000

FOX4000は、18個の半導体酸化物センサーを用いて、複合的なにおいをパターンとしてとらえ、試料間で比較することを目的としています(図1)。

図1

そして、試料のにおいのパターンはデータベース化され、目的、用途に応じて官能評価におけるにおい強度、 またはにおいの質(記述子)と相関づけられます。その際、 多変量解析ソフトウェアAlphaSoftの機能の一部である主成分分析(図2)やPLS回帰分析(図3)が用いられます。

図2
図3

半導体酸化物センサーは、非常に高感度にあらゆるにおい成分に応答するといった汎用性を有しています。 また、官能評価手法を補完する目的で、 におい識別センサーシステム FOX は以下のような利用価値があります。


  • 繰り返し測定ができる(・・・ヒトは嗅覚疲労がある)
  • 客観的に判断できる(・・・ヒトの判断は主観的なバイアスがかかる)
  • データとして保存できる(・・・ヒトは記憶に頼ることになる)

一方、におい識別センサーシステムの結果から解釈しにくいことは、試料間でにおいの違いが示されたとき、 その寄与しているものは何かという追跡調査です。半導体酸化物センサーは、成分に対する選択性が乏しいことが理由です。 そこで、そのさらなるニーズを解決するために、フラッシュGCシステムHERACLES IIを提案します。

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におい分析【2】 高速GCによるにおい識別と成分推定

フラッシュGCノーズ HERACLES II

HERACLES II は、高速昇温と濃縮機能(Tenax)を本体に組み込んだ超高速・高感度GCです。複合的なにおい成分をパージ&トラップにより濃縮し、2本のカラム(極性の異なるDB-5とDB-WAXなど)で迅速に分離し、2つのFIDで高感度に検出することができます。そして、試料間で異なるクロマトグラムパターンを比較し、さらにその違いに寄与する化合物を推定することを主な目的としています(図4)。

図4

解析には、FOX4000と同様に多変量解析ソフトウェアAlphaSoft が使われますが、 HERACLES IIでは分類したマップに加えて、その分類に関係したピークの存在が明らかになります(図5)。

図5

HERACLES II では、2本のキャピラリーカラムにより、わずか2~3分でにおい成分を分離できます。 多くの試料を短時間で処理できる能力をもっていることから、官能評価やにおい嗅ぎ分析をする前の試料のスクリーニングツールとして最適です。

通常、試料間のにおいの違いを試みるために、GCやGC-MSで分析すると分析サイクルが長いため(試料あたり1時間前後)、 多くの測定をこなすことはできません。そこで、結果としてのクロマトの解釈は分析者の経験や試料に関する知識をもとに行われるのですが、 必ずしも目視で判断できるほどにおいの差が表現されているとは限りません。

しかし、HERACLES IIでは分析時間が短いことで、複数の繰り返し分析が可能となり、 客観的な統計手法に基づいて試料間の差に影響しているピーク(成分)を見つけ出すことができます。 さらに、保持指標に基づく化合物ライブラリAroChemBaseを使うことで、試料の分類に寄与したピークの化合物名、及びそのにおいの特徴(記述子)を推定することができます(表1)。

table1

HERACLES II は、高速分析、高感度といったハード面での利点と、 多くの成分情報から特徴的な違いを見つけ出すといったソフトウェアの利点をあわせもち、 他に類をみないにおい分析用の機能が凝縮されています。

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におい分析【3】GC-Oによるにおい成分の同定

におい嗅ぎシステム SNIFFER 9000

HERACLES II で同定されたにおい成分が、 真にヒトの嗅覚に寄与しているか否かは、各におい物質の嗅覚閾値との関係になるため、最終的にはヒト(試験者)の鼻を検出器としたGC-O、 におい嗅ぎシステム SNIFFER 9000が用いられます。



FIDやMSで検出されたピークが、その強度に応じてにおいが強いとは限らず、ヒトの嗅覚閾値と成分濃度には相関がありません。 そこで、Sniffer 9100ではカラムで分離された成分をヒトで嗅ぎ分けることで、 試料のにおいを特徴づけている成分、 また異臭として感じる成分を同定するために利用します(図7)。



におい嗅ぎシステムは、ヒトの嗅覚を利用した手法であるため、においに寄与している成分を同定するには最も確実な方法です。 また、AroChemBaseと併用することで、FIDやMSで検出されないピークでも、 ヒトの嗅覚で検知した化合物の保持指標とそのにおい情報から、 化合物の絞りこみを行うことが可能です。

しかし、嗅覚の感覚疲労、および試験者の時間が制約(1分析あたり約1時間)を考慮すると、多くの試料を処理することができない手法であるため、 前述したHERACLES II のような迅速な識別ツールを用いて、 試料間の比較、スクリーニングを行い、におい嗅ぎ分析にかける試料を最小化することが望まれます。

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におい分析【4】IMR-MSを用いたフレーバーリリース分析

フレーバーリリース分析計 FlavorSense

多くの食品の香りは、気相中に存在する揮発成分によって影響されるます。 通常、ヒトがワインを飲んだり、ヨーグルトを食べたりするとき、その状態はダイナミックであり、 希釈と再平衡の影響によって、ヘッドスペース中の揮発成分は時間と共に変化します。

前述したFOX4000HERACLES II を用いたスタティックヘッドスペース分析では、直接的に嗅ぐ香り(orthonasal)、 つまり食品そのものが有する香気成分の分析には適していますが、必ずしもそれが風味に一致するとは限りません。 むしろ、食品が口の中で咀嚼され、口の奥から鼻に抜ける刺激(retronasal)の理解が、知覚との相関を得る上で重要となります。 気相中の揮発成分の直接測定は、イオン分子反応質量分析法(IMR-MS)のようなオンラインMSを用いて可能となります。

フレーバーリリース分析計 FlavorSenseは、イオン分子反応を利用した、 高速応答、高感度なオンラインMSです。 IMR-MSでは、Hg、Xe、Kr等の低イオン化ポテンシャル(10 eV~14 eV)のプライマリイオンを用いて試料ガスを完全にイオン化するので、 電子衝突法などで見られるフラグメンテーションやスペクトルの重なりがほとんどありません。 そのため、カラムで分離することなく有機、無機を含むあらゆる複合揮発成分のオンライン同時分析が行え、 近年では生体と組み合わせたフレーバーリリース解明に応用されています。

図8

フレーバーリリースの測定では、装置のインレットに繋がる加熱トランスファーラインの先端にノーズピースをつけ、 試験者の鼻に挿入します(図8)。 そして、試料となる固形あるいはペースト状の食品の一定量を口の中に入れて咀嚼したとき、または液体飲料をストローで飲んだときに、 試験者の鼻から抜けるretronasal aromaを測定します。


図9


分析する質量数は、試料に含まれている香気成分(GC-MSで同定)の中から1つまたは複数を選択し、 1つの質量数あたり100~300msecの高速スキャンを反復し、食べ始めからの経時的なフレーバーリリースプロファイルを作成します(図9)。


におい分析ツールについて

ここに記載したにおい分析ツールの4機種はいずれも異なる長所を有し、それらを複合させることにより、分析やその結果解釈にかかる時間を大幅に短縮し、 試料間のにおいの特徴比較や、におい成分の簡易同定など、商品開発プロセスにおける多くのニーズを満たすことができます。


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